第一章 遡上出来ない魚道

 とある渓流の床固工群。そこには同時に施工された魚道がありました。ところが・・・ 

 いわゆるストリームタイプの魚道で、底版部分にはアンカーピンで玉石を固定した金網が設置されているのですが、勾配は1/8でとても急です。更に流水によって玉石が踊り、金属疲労でアンカーピンが折れ、流出しているではありませんか。

 そのため流速は早く、1.5m/s程度もあり、仮に数秒しか維持出来ないと言われる対象魚の突進速度を2.0 m/sとしても11mの魚道を上り切るには20秒以上掛かる計算となり、理論上遡上が不可能なのです。



第二章 踏査

 そこである一人の匠が立ち上がりました。匠は用心深く現地を確認、更に魚道下流端と渓流との間に落差が生じている事、本堤切欠部の流速も速い事を確認しました。

 また、主からはこんな条件が付きました。

「コンクリート躯体は取壊し、打足しは不可」

  匠は条件を整理し以下の方針を決めました。

@    経験的に最低でも1/15程度以上なければストリームタイプは困難。従って  プールタイプとするしかないが、更に通常より条件が悪い事からプール水  深を深くとり減勢能力を稼ぐ。

A    現地に豊富に存在する自然石を用いて隔壁を作る。

B    下流端も自然石を用い魚道を延長する。

C    本堤切欠部の減勢を考慮する。

 以上の条件に基づいて早速検討に掛りました。

第三章 実験

 そんなある日、主から一本の電話が入りました。

 「ちょうど施工やってるので業者に手伝わせて実験してみてはどうか?」

業者にとっては何と迷惑な話でしょうか。しかし、匠にしてみればこんなチャンスは滅多にありません。早速、ストリームタイプ、部分越流タイプ、全面越流タイプ等の石の配列・使用径を立案し、現場に赴きました。

 現場では匠自らオペレーターを指示し、次々と案を具体化していきます。

そしての目に適ったのが部分越流型の中でも、越流部を隔壁毎にややずらし、接近流速の軽減を図ったいわゆるノルウェー型だったのです

第四章 設計

 この実験をベースに匠は更なる工夫を凝らし、作図・数量算出・報告書の作成を行いました。

 そして・・・

第五章        完成

 床固工に設置されながら充分機能しなかった魚道。

 その流速の速さから魚が遡上出来なかった魚道が匠の手により大きく変貌を遂げたのです・・

 何ということでしょう。あの流れの速かったストリームタイプの魚道は現地の自然石を使って、なみなみと豊かに水を湛えるプールタイプの魚道に変身したではありませんか。これには魚たちも大喜び。ランダムに、しかし目的を持って並べられた自然石はまるで天然の瀬と淵の様です。捕食にそして産卵に、それは嬉しそうに仲良く遡上する魚たちの様子が目に浮かびます。

 費用も何とか予算内に納める事が出来ました。(測量試験費含む)

 大改造!魚道でビフォーアフター
なんということでしょう(サザエさんの声で)
After
※過去の経験を基に構成しています
バックッホーでφ500前後の石を配置します
ノルウェー型配置の流況
遡上不能。ストリームタイプ魚道
改良前
Before